奈良県の60%は吉野郡です。その吉野全体を吉野林業の地域ともいいますが、本来の中心地は吉野川 上流域にある川上村・東吉野村・黒滝村を中心に構成されています。
植林の歴史は、足利末期(1500年頃)川上村で行なわれた記録があります。
そして、江戸時代には、造林技術の発展、借地林制度、山守制度による山林管理制度の確立によって林業地帯として進展を遂げてきました。
明治期に入り、集約的な施業による近代林業の範として順調に発展を遂げ、現在の吉野林業の基盤を確立してきました。
昭和10年代に入り、吉野町に木材工業団地が形成され、鉄道の開設と共に吉野材の流通が飛躍的に拡大し、現在約60企業により製材工業団地を構成しています。
長伐期・多間伐施業の生産活動と、製材業及製箸業等木材関連産業の発展によって林業木材業界が一体となり、吉野に循環型の木材産業地帯が形成されました。
吉野林業の施業特徴は、密植多間伐長伐期施業にあります。そのため、100年以上に山林経営を続けるには親子4代もかかることとなり、林業経営の維持がむずかしくなります。そのため、大資本の所有者と地元の山守によって古くから山林が維持されてきました。吉野独特の長伐期の林業経営です。
植栽本数は全国的にはha当り3000本程度ですが、吉野ではha8000本程度植えられています。そして、弱度の間伐を多く繰り返す事により、通直で年輪幅が緻密で均一な材が生産され、木質の良さと共に、葉枯らし乾燥による色艶の良さ(淡紅色)も特徴の一つです。
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又、吉野杉として名前の通っている吉野林業の、もう一つの施業の特色として、杉桧の混交林施業が多く行なわれています。そのため、現在生産される吉野材の流通量は杉桧同程度となっています。
そして磨き丸太生産は、京都北山に次いで古くから行なわれており、吉野では長伐期施業の間伐材から生産する方法と、短伐期施業による方法とにより多様な施業が行われています。
このように多品目の木材を生産しているのも、吉野林業の特色と言えます。
近年の林業・木材関連産業を取巻く環境は、「外材輸入の増大」「木材価格の低迷」「木材流通構造の変化」「住宅建築様式の変化」等により価格流通量共に厳しい状況にあります。反面、最近の外材価格の上昇により国産並材の流通が増加し、産地間競争がおきています。
しかし、優良材生産を中心とする吉野林業にとって、「木材流通構造の変化」「住宅建築様式の変化」は、既存の流通ルートでは対応が難しい状況にあることは確かです。
現状を打開するには、最終消費まで捉えた、産地主導の販売促進等の改革が必要と思われます。
そして、エンドユーザーの多くの意見を反映させるため、多くの人達が吉野林業に吉野材に、親しむ場の提供を広げていくことも大切であると思われます。